Milindaの書斎

読んだこと、考えたことなどを書き留めます。外国語はたまに。

読みました 21


加藤陽子『戦争まで』を読みました。

本書の基になっているのは、東京大学教授の加藤先生が高校生に行った講義です。満州事変から太平洋戦争に至るまでの約10年間の外交史を、実際に高校生たちと史料を読み解きつつ、語っておられます。


講義録だけあって語り口はやさしいのですが、情報はかなり詰め込まれています。学校の教科書に書いてあることはすべて知っていて当然だよ、という調子で話が進むため、「入門」には適していないかもしれません。


学説の細部はこれからも変わり得ると思いますので、本書全体の教訓をあえて抽象的に、大掴みにまとめてみます。
(あくまで私なりのまとめです。違う部分が心に残った人もいるでしょう。)


1. 人の知性は万能ではないが、それでもきちんと結果を見通している人間はいるものである。

1.1 その人が自分と同じ意見ならばいいが、反対の意見をもつ人たちの中に「先が見える人」がいたらどうするか?


1.2 各陣営がもつ資源は平等ではない。しかし時間は平等である(はずだ)。先を見通せるのは時間をかけて考えたからだ。


2. 交渉は必ずこじれる。後世の視点から分析するなら、結果だけを見るのではなく

  • どこまでなら妥協可能だったのか
  • 譲れない条件は何だったのか

と考えてみる必要がある。


2.1 どんな場合でも妥協の余地はあるのではないか?


3. 「A陣営 vs B陣営」というまとめは、あくまで図式的なものである。実際は常に3つ以上の勢力があり、妥協のパターンも無数にあり得たはずだ。


3.1 史実として起きたことが、可能性の高いパターンだったとは限らない。


3.2 どの陣営にも思惑があって主体的に選択しているはずだ。一方が正義・悪と決めてかかると、主体性が正しく評価できない恐れがある。

戦争まで 歴史を決めた交渉と日本の失敗

戦争まで 歴史を決めた交渉と日本の失敗

  • 作者:加藤 陽子
  • 発売日: 2016/08/09
  • メディア: 単行本(ソフトカバー)