大沢在昌『夢の島』を読みました。600ページほどの大作ですが、簡潔な文章で書かれているので量の割には早く読み終えることができました。
これまでに読んだ本の中では、おそらく『天帝のはしたなき果実』に次いで二番目に分厚い小説です。
私はプロットで魅せる大長編をあまり読んでこなかったので、いい体験になりました。
前半は都会のアウトロー小説、後半は島での冒険小説という感じで、ちょっと趣が変わります。しかし父との因縁が作品全体を貫くテーマになっているため、ブレているという印象は受けません。
(これくらいの大掴みな言い方ならネタバレにもならないでしょう)
私はどちらかというと飾りのない文体が好きです。だから大沢先生のようにあっさり書くのも上手さだと思います(大沢先生に限らずハードボイルドと呼ばれる作品の特徴でしょう)。
ただ、「あえて簡潔に書いた文章」なのか「書き手に語彙が少ないだけ」なのかって実は線引きするのが難しいんですよね。
作者名を伏せて「アマチュアが書いた小説です」といってこの作品を読まされたら、「なんだ、えらく単純な文章だな。この人は難しい文章が書けないんだな」なんて思ってしまうかもしれません。しょせん、私の見る目はそんなもんです笑
あと人物の外見をどこまで描写するかはそのジャンルによるんですよね。
ある先生がnoteに書かれたことですが、ラノベはヒロインの可愛さが命だからラノベ作家はヒロインの外見描写に凄く力を入れるそうです。
なので、そういう文章しか読んだことない人がハードボイルドを読んだら「おい、ヒロインがどんな顔でどんな姿なのか全然わからねぇぞ。もっと思い浮かぶように書けや。クソだなこの小説」と感じるかもしれません。
※別にラノベ読者に対して悪意があるわけではありません。私もラノベは好きです。最近の作品は分からなくなってるけど。
何が言いたいのか自分でも分からなくなってきましたが、要は「上手さ」の定義って難しいんだよな、ということです。

- 作者:大沢 在昌
- 発売日: 2002/11/13
- メディア: 文庫