Milindaの書斎

読んだこと、考えたことなどを書き留めます。外国語はたまに。

国語 5 「という」と「のような」


講師:お主が書いた記述問題の答案に、気になるところがあったんじゃがのぅ。

生徒:あ? なんだよ。俺はカツアゲした金でガチャ回すのに忙しいんだよ。殺すぞ。

講師:わしは勉強を教えるだけの立場じゃから、お主の将来に責任は持たんぞ。まあ、それはともかくじゃ。この前やった問題では、筆者がこう言っておってじゃな。

 かつての「自分探し」とは知識で自分を肥大化させることだったが、現在の若者はソーシャル・ネットワーキング・サービスSNS)という仕組みに上手く自分をはめ込むことで「自分探し」をしているように見える。SNSとは、例えば短文投稿サイト「ツイッター」である。


講師:この記述に対して「筆者は現在の若者がどうやって自分探しをしていると考えていますか」という設問があったとする。

生徒:めちゃくちゃ簡単じゃねーかそんなの。SNSを使うって書いてあるんだから、それ抜き出しゃいいじゃん。

講師:うむ。そんなに難しくはない問題じゃ。①筆者の主張に賛同するかどうかは別としてな。だが、お主は答えにこう書いておってのぅ。

 現在の若者はツイッターという仕組みに自分を上手くはめ込むことで「自分探し」をしている。


生徒:これがどうした? 正解だろ? さすが俺。

講師:内容はだいたい合っておるが、おそらく減点される。学校の先生はわしほど甘くないからのぅ。

生徒:あ? 俺の完璧な答えにケチつけようってのか?

講師:②脊髄反射する前に下の2つの文を比べてみよ。何が違う?

 現在の若者はツイッターという仕組みに自分を上手くはめ込むことで「自分探し」をしている。

 現在の若者はツイッターのような仕組みに自分を上手くはめ込むことで「自分探し」をしている。


生徒:同じだろ? 同じ文章2つ並べて何がしたいんだよ。意地悪問題か。「間違い探しです」と言いながら実は違いがないってやつだろ。

講師:……③本気で言っておるなら深刻じゃな。語句に対する注意が働かぬ者は、なかなか国語ができるようにはならん。とりあえず太字で強調してみるかのぅ。そうすればお主にも違いが分かるじゃろう。

 現在の若者はツイッターという仕組みに自分を上手くはめ込むことで「自分探し」をしている。

 現在の若者はツイッターのような仕組みに自分を上手くはめ込むことで「自分探し」をしている。


生徒:「という」と「のような」が違う?

講師:うむ。特別サービスで太字だけでなく赤字にもしておいたぞ。追加の指導料はなしでよい。まあ、それはともかくじゃ。「という」と「のような」は何が違うと思う?

生徒:字数。

講師:言うと思ったわい。ありきたりすぎる答えなので、罰としてグラウンド10周。

生徒:ふざけんな、いまはそれも体罰になるんだぞ。じゃあ、「という」と「のような」は何が違うんだよ。

講師:ふむ。お主は数学で必要条件と十分条件というものを習ったかのぅ?

生徒:習ってねーよ、文系だし。

講師:いや、文系理系は関係ないほどの基本的な話じゃぞ。中学校くらいで習うはずじゃ。④まったく最近の若い者は……いまは国語の指導時間じゃから、そんなに詳しく説明せんことにするがな。「AというB」と言った場合、「同値」を意味することが多いんじゃ。式で書くと「A = B」じゃの。

生徒:数式はいいよ、頭が痛くなる。

講師:要するに、「ツイッターという仕組み」と書いたら、「筆者が指している仕組み=ツイッター」という意味になる。まあ、そういう解釈が自然じゃろ。

生徒:はぁ。

講師:別の言い方をすると「筆者はツイッターの話だけをしており、他の仕組みの話はしていない」ということじゃ。

生徒:じゃあ「のような」だと?

講師:「AのようなB」といった場合、AはBに含まれていて、その具体例の1つなんじゃ。他に、⑤比喩の「のような」もよく出てくるがの。ややこしくなるから、比喩の話は置いておくわい。

生徒:うん、俺もややこしい話は聞きたくない。

講師:ともかく「ツイッターのような仕組み」と書いた場合、筆者が指す「仕組み」にはツイッター以外の色々なものがあることになる。色々ある中の具体例としてツイッターが挙げられておる、というわけじゃな。

生徒:で、なんで俺の答えは違うんだ?

講師:もう一度、問題文をよく見てみよ。SNSについて「という」と「のような」のどちらが使われておる?

 かつての「自分探し」とは知識で自分を肥大化させることだったが、現在の若者はソーシャル・ネットワーキング・サービスSNS)という仕組みに上手く自分をはめ込むことで「自分探し」をしているように見える。SNSとは、例えば短文投稿サイト「ツイッター」である。


生徒:えーと……「SNSという仕組み」って書いてある。

講師:うむ。「という」だから「筆者が言う仕組み=SNS」じゃ。そして、ツイッターについては「という」も「のような」も使われておらんが、代わりに「例えば」とあるじゃろ。

生徒:ってことは?

講師:「例えば」と言っとるんじゃから、ツイッターは具体例なんじゃ。筆者は「SNSという仕組み」の話をしておって、世の中にある色々なSNSの具体例としてツイッターを挙げておる。ということは、じゃ。このお主の解答を見直して、何か気づかんか?

 現在の若者はツイッターという仕組みに自分を上手くはめ込むことで「自分探し」をしている。


生徒:いやいや、何度見直しても俺の答えは完璧で……⑥あっ。

講師:気づいたようじゃな。ここは「ツイッターという仕組み」ではなく、「ツイッターのような仕組み」と書いたほうが⑦よりよいじゃろう。 今日の話を「暗記」しておったからといって急に国語の点数が上がるわけではないが、言葉を注意深く見るようにしておれば長期的には結果が変わってくるはずじゃぞ。


【おまけ問題】

1. 下線部①で講師はどう考えていると思いますか。

ア)国語の問題にされるのは素晴らしい文章ばかりである。よって筆者の主張には賛同すべきである。
イ)国語ができるようになるには批判的思考力が必要である。よって筆者の主張に賛同してはいけない。
ウ)国語のテストは筆者の主張が読み取れているかどうかを試すものである。よって解答者の個人的な考えとは切り離して筆者の考えを理解すべきである。

2. 下線部②は何を喩えたものでしょうか。

3. なぜ講師は下線部③と言ったのでしょうか。

4. なぜ講師は下線部④と言ったのでしょうか。

5. あなたは文系の学生でも「必要条件」や「十分条件」を理解しておくべきだと思いますか。思いませんか。理由も添えて答えてください。

6. 下線部⑤とありますが、次のア〜エのうち比喩の「のような」ではないものを選びなさい。

ア)母は鬼のような顔で怒った。
イ)熱帯のような暑い場所には行けないな。
ウ)外は熱帯のような暑さだった。
エ)まるで羽のような軽さだ。

7. 下線部⑥で生徒は何に気づいたのでしょうか。

8. なぜ講師は下線部⑦と考えているのでしょうか。