Milindaの書斎

母国語と外国語を行ったり来たりしながら、自分なりに「書くこと」を追求したいと思います。

十月歌会のために作った歌


私は放送大学の短歌会に入っています。十月の歌会に向けて作った歌を載せてみます。

  • 歌会のテーマが「国道」だったので、できるだけそれに関連させています。私が山国の出身であることもあって「国道=山道」と捉えた歌が多いです。
  • 100首を目標に作りました。「秀歌を選んで100」ではなく、無理やり100首こしらえたので、駄作も多々含まれております。お目汚しかと思いますが、興味を持たれましたら続きを読んでやってください。

1 初日の出いくら燃えてもこの霜は融けてくれない五十号線

国道50号は水戸と前橋をつないでいます。

2 あいにくの鉛の雲が御来光どう隠そうと君さえいれば

→早くも国道が関係なくなってしまいました。

3 朝の靄 虹も銀河も呑み込んで俺をそんなに事故らせたいか

4 白い霧 道の行く手も見えやらぬ 失恋直後の我も隠せよ

5 出来たての日差しを中に閉じこめて路面に留む朝の霧粒

6 暁光の結晶つくり空かざる国道の霧 風よ払うな

7 道沿いで天を突き刺す杉木立 凛々しいきみが生む花粉症

8 風薫り四方八方みな新緑この季節だけ国道が好き

9 膨れゆく入道雲に負けぬほど夏に浮き立つ童心の我

→これも道が関係なくなってしまいました。

10 国道の坂の向こうにわき立つはあの日と同じ故郷の夏雲

11 峰雲の厚さ白さを見るにつけ薄く汚れた我に恥じ入る

→これも道が関係なく(略)

12 耳を裂き夕立を呼ぶ積乱雲いいぞ紛らせ恋の涙を

→これも道が(略)

13 国道の落ち葉ふむたび思い出す繋いで歩く手の温かさ

14 枝にあれば見頃の紅葉と持て囃し地に落ちたれば早や可燃ゴミ

15 もう初冬 枝にわずかな臙脂の葉 寂しくないぞ俺が見ている

→これも道が(略)

16 吹雪でも吹雪だからこそクルマ乗る胆力なけりゃ住めぬ雪国

→「雪の日は怖いから乗らない」っていうわけにはいかないんですよね。買い物一つにも絶対に車は要るし。

17 割り箸を折るあの軽い音がしてサイドミラーがブチ割れていた

→スノーシェッドの柱にサイドミラーをぶつけてしまった、という体験を詠んでいます。分かりにくいですね…。

18 雪崩から僕らを守るこのシェッド 道を狭めて物損招く

→これもスノーシェッドの変(仮称)を詠んだ歌です。

19 いつだって一号線だよこの道は きみとぼくだけ歩く道だよ

20 高架から屋根見るだけで脊髄も脳も溶け出すあの人の家

21 あの人の家からここまでぶち抜けよ なあ国道よ 待ち人は来ず

22 「注意」って看板の割に降りもしない落石よ閉ざせ私とあの人

23 なぜ逃げる? 逃げなくていい 君の家は国道沿いと分かってるから

24 県道は真っ直ぐ伸びて逃げる場所 隠れる場所も君にはないよ

→以上2首はストーカーの歌。

25 ナデシコとヒメバラ道に競い咲き 盛りの私はただ捨てられて

26 この道の果てなど夢想もしなかった 夢の彼方へきみ転校す

27 夕霞 道の行く末 押し包み 見えぬ背中に伸ばす指先

28 手を重ね はじめて通った この国道いまは家族となって帰省す

29 トンネルが通った日に母 産気づき我が産声は県都で聞こえた

30 世に稀なトレカを友が手に入れた はしゃぎ飛び出しああ愛し子よ

→道がテーマなんだから、子どもが慌てて道に飛び出すということは…。

31 交差点 くすんだ血糊 途切れつつ濁点のごと打ち続きある

→折句です。各句の頭文字をつなげると「こくと゛う」になります。四句目は「濁点」という言葉をそのまま取るということで。内容的にも前の歌に関連しています。

32 アトピーの鱗屑散らす皮膚のごと おらが国道 劣化止まらず

33 丁字路の黒を白へと描き直す 膝にゃ悪いが風化にゃ強い

→「黒を白へと」というのはアスファルトをコンクリートで舗装し直したということなのですが、分かりにくいですね。

34 瀝青の生まれ変わった国道にガム吐き捨てるあの対向車

→「瀝青」というのはアスファルトのことです。

35 工人が汗水垂らし張り替えて照り映える道ああゴミが舞う

36 抜かれたら抜き返さんとドライバー猛り狂いぬ修羅の道かな

37 追い抜きに事故でもあらば傍らの代え難き人も絶え入るものを

→無理やり追い抜いて事故にでもあったら、お前の隣に座っている大切な人も死ぬんだぞ、という歌です。

38 誰彼とすれ違う毎おめき立つ前方車両 愛なき国道

39 ローディーさん田舎の道は狭いのです街へ行くことできないでしょうか

40 やあノウサギこの国道は危ないよ うちにお帰り畑を避けて

41 あら可愛い瓜のきょうだい駆けていく国道に出て轢かれて割れた

→「瓜」とはイノシシの子どものことですね。

42 おおイタチ襤褸と裂かれて道の華 官能的に舌見せるなよ

43 この道で熊を見かけた時にはな動くな喋るな写真を撮るな

→これも折句です。初句から四句目までの頭文字を取ると「こくとう」となります。五句目はまあ大目に見てください。

44 息凍るいつものままの通学路 今日は明日への入試への道

45 寒波すら心地よきかな手応えで満身震え乗る路線バス

46 自信なき試験に臨むバスの中 朝焼け満ちてああ禍々し

47 国道のトンネル抜けたらもう会社 心臓とび出る新社会人

48 国道を突っ切って着く我が職場 川面の水と抜きつ抜かれつ

→国道沿いに川が流れているという情景なのですが、伝わりにくいかも。

49 ブタとなり毎朝 屠殺さる工場 国道のバスに揺られて向かう

50 木々の葉の一つ一つに命満ち仕事さえなきゃいい道なのに

51 街が目覚め活気かくせぬこの国道 我は仕事を休み嘔吐す

52 一〇分も片側通行バスを留む遅刻の言い訳見つけ安堵す

→ちょっと「仕事に行きたくない」系の歌を入れすぎましたか(笑)

53 「名古屋では黄色まだまだ赤勝負」実行したら白バイ見てた

54 黄信号守るが損とペダル踏み駆け抜けんとす「はい違反二点」

55 「あの会社いじめ会社」と主張する謎の看板のどかな国道

→カ○バの近くですね。本当は国道じゃなかったと思いますが。

56 道を行く者みな二度見する看板 草叢の葉は心涼しく

57 これ国道? いや酷道さクソ田舎 引越し終えてベッドに伏せる

58 空気だけ水だけ木だけ笑顔だけ割と何でもある異動先

59 鳥は鳴き風は笑って川歌う気を抜けばすぐ村八分だよ

→田舎には田舎の難しさがあるんです。もちろん良さもありますがね。

60 ボロ信号 見てよみがえる筋肉痛 チャリ遠征のあの日あの風

61 夕映えに記憶たぐられ暫しの間 部活帰りの坂道偲ぶ

62 河川敷 カバン投げ捨て寝転んで見たのと同じ薔薇の残照

63 物言わぬ友よ今までありがとう国道沿いのこのタイムリ

→「タイムリー」というのは中部地方にたくさんあったコンビニですね。合併でなくなりました。

64 道沿いのコンビニ前の誘蛾灯 説明できぬ怖気が走る

65 駅裏のバイパス二本つながって今はこちらが表と賑わう

66 表なりし商店街はシャッター街 並木の葉のみ同じ金色

67 酒屋さん医院碁会所本屋さん旅館もどこに平成は遠く

68 民宿の河畔の眺めすでになくビルに見えるがあれ教会か

69 思い出がロードサイドに立ち並ぶ マックにバローに歌の19

→以上5首は、歌会のために最初に作ったもの。自分の体験にわりと忠実な歌。

70 世に出る日バスで上った国道を徒[ただ]にぶらつく自適の身かな

→国道というテーマに「定年後」というテーマを足して作った歌。

71 客乗せぬ道はこれほど安らぐかダイヤは追わず愛想も要らず

72 出る時刻 着く時刻みな胸三寸 規矩がなければ張り合いもなし

→以上2首は「バスの運転手の定年後」をイメージした。

73 どうせなら欲を隠すな国道の番号ほどの寿命を願え

→最も大きいのは沖縄の507号線みたいですね。

74 百一号 百一歳で走るんだ 手紙を残し北へ飛ぶ祖父

→国道101号は青森にあります。

75 百名道すべて走ると意気込んだ父は浄土の小道に逸れた

76 藤の棚 葬車の窓に見る国道 蔓よ枯れるな せめて永らえよ

→霊柩車のことを「葬車」ともいうらしいので使いましたが、ちょっと馴染みがない言葉かも。

77 国道を逸れて墓所へと参る道 いくつの命 我に連なる

78 ミズナラの枝と進化の系統樹 二重写しになる遊歩道

79 なんかここアジサイ街道らしいけど何処にあんだいそのアジサイ

80 霧雨がガードレールの苔濡らす アジサイあればなお似合おうに

→以上2首は国道256号「板取街道」をイメージしています。アジサイはある所にはちゃんとあります。

81 壊れても荒れても直さぬあの国道どうせダム湖に沈むんだからと

82 水底にいつ沈むのか あの国道 どこから見てももう獣道

83 放置されただ朽ちてゆくあの国道 YouTuberを呼び寄せるのみ

→以上3首は国道418号線の一部区間岐阜県八百津町あたり)をイメージしています。

84 国道沿い緑の山里のどかなり転落事故の本場に見えぬ

85 この里の御霊鎮めの薪能ポスターを見て知る道の駅

86 鎮むべき無数の霊が重なって 淀んでいるかこの峠には

→以上3首は国道157号の能郷白山あたりをイメージしています。

87 国道って山道ばかりじゃないんだね海を貫く三十号線

→国道30号は岡山県香川県をつないでいます。

88 いつ来ても夢でしかなく記憶にも残らずまたも海辺を走る

→山国出身の者にとって海岸ドライブは何度やっても現実感がないんです、分かりますか?

89 潮の香は色んな命の香りだと最近やっと分かってきたよ

→山の香りが色々な生命の香りであるのと同じように。

90 看板の「夜は一人で海来るな」なに指すものか知られし時代

91 海岸にゴミ捨て置いて去る者の背中に感ず無限の断絶

92 秒ごとに塗り替わりゆくCadillac Ranch 同じ速さで歴史つむぐか

アメリカのルート66をイメージした歌です。「キャデラック・ランチ」に次々と新しい色が塗られる様子に、アメリカの歴史が速く流れていくことを重ねて……みたいな。分かりにくいですね。

93 大陸のハイウェイ伸びる北極圏 わがふるさとの白馬の名あり

→アラスカのユーコン・ハイウェイの終点に「ホワイトホース」という街があることから、長野県の白馬村を連想した…という歌です。分かりにくいですね。

94 ああこれがロマン街道の元ネタか 山と川しか似とらんやろが!

木曽川沿いにある「ロマンチック街道」と、おそらくその元ネタと思われるドイツのロマンティック街道を比較した歌です。分かりにく(略)


95 川岸にネコやネズミの城あれど猿はおらぬかシュヴァルツヴァルト

→ドイツのライン川沿いに「ネコ城」「ネズミ城」と呼ばれる城があることと、日本ラインの近くに「猿啄城」があることを比較しました。分かりにく(略)


96 衛星のCナノチューブ地獄への蜘蛛糸のごと夢ぶら下げる

宇宙エレベーターと『蜘蛛の糸』に類似を見出しています。分かりにく(略)。「未来において国道に当たるものって何だろう」と考えたら、宇宙エレベーターかなと思ったのです。

宇宙エレベーター協会なんていう団体があるのは、私も知りませんでしたね…(笑)

97 スターボウ見飽きた後の静寂は君とでなけりゃ耐えられないよ

→宇宙船で星間飛行してる歌ですね。これも未来の国道(略)

スターボウについてはこちら。


98 須臾の間を無の大きさがすり抜けて君との旅をメモリに刻む

→これはフラッシュメモリに情報が記録されることを「道のトンネル」に見立てて詠んだつもりなのですが、めちゃくちゃ分かりにく(略)。「ミクロの世界で国道に当たるものは何だろう」と考えたらこうなったのです。
→「須臾」というのは現在でも慣用句に使われますが、10のマイナス15乗という非常に小さな数のことを指すそうです。また、古典的な物理学では電子の半径を約2.818×10^{−15}メートルと考えていたそうです。そこから「須臾の間=電子1つほどの小さな隙間」と連想したわけですね。
→でも現代の物理学では「電子の大きさは無。そう考えても不都合はない」ということになっているらしいです。「須臾の間」よりもっと小さい隙間を大きさのない電子がすり抜けていって、なんかそれがフラッシュメモリの仕組みにも関係してどーのこーのらしいです。正直、私もよく分かっていません。


99 放課後の送り迎えに大通り学校見えず不安が募る

→最後は折句で「放送大学」を詠むこととしました。道にも関係させています。

100 放置した送信履歴 大切な学生時代の記憶だけれど

→これも放送大学。道は関係ありません。まだ初心者なのに折句みたいなお遊びをするのはよくないのかな、と思ったりもしますが……。

101 「ほっといて」素っ気ないのに抱いてくる がっつきすぎよ車の中で

→これも折句です。「ほう」「そう」「だい」「が」「く」を各句の頭に置いてみました。車の中で、と無理やり付けて道にも関係させたつもり。

102 法悦はそう有るものでなし大涅槃 我を捨ててこそ苦は苦だと知る

→これも各句の頭が「ほうそうだいがく」。何か難しそうなこと言ってるだけで、深い意味はありません。大涅槃というものの意味は私にもいまいち分かりません(ぉぃ)。ただ、苦に意味を求めすぎるのは我執であり、苦は苦に過ぎないんじゃないか、とは思っています。