Milindaの書斎

読んだこと、考えたことなどを書き留めます。外国語はたまに。

Composition 83 中学を卒業したころの長嶋茂雄


長嶋茂雄『燃えた、打った、走った!』p80-81より。
中学校を卒業する時、親友に贈った文章だという。

 桜花らんまんたる四月、私は貴君達と胸を躍らせ、希望に燃えて佐倉中学の校門をくぐりました。
 それがはや後数日で別れねばなりません。今ふり返って見れば、数々の想い出がくり出され胸がつまるような感じがします。
 一番印象に残るのは何んといっても野球でありました。野球といえば郡で優勝し、又さらにブロック大会にまで出場し、あの時の試合に敗戦したのが印象に残ります。
 やがて学校を去り、広い広い社会へ進みますが、如何なる艱難にあっても屈する事なく、如何なる悲しみにあっても希望の光を見失う事なく、何時も微笑して心ひろびろと、周囲を清く明るく、お互いに行きませう。(中略)*1
「明日の事を思い煩うな、明日の事は明日みずから思い煩わん、一日の苦労は一日にて足れり」と言う*2言葉があります。何もかもはっきりとわかる日、正しい者、真面目に努力する者のみが栄える歓喜の世界がやがて来ませう。
 スポーツをやるにしろ、何んの運動をやるにしろ、健康第一、雨にも雪にも負けないで、いや、雨を喜び雪を楽しむというやうな気持で晴々しい日々を迎えるようお祈りします。
 何時も明るい太陽の下で、喜び勇んで共に勉学する日をあの美しい夢を描いております。
 又あふ日まで、ではさようなら。

In April three years ago, when cherry blossoms bloomed, we went through the gate of Sakura Junior Highschool for the first time. I can recall my heart was leaping up with expectations and fired with high hopes.
However, time flies, and we have only several days left. On looking back, too many memories recur, and sentiments fulfilled me.
After all, baseball is the most impressive thing in my school life. We could win the victory in the county tournament but regrettably lost in the regional match. It has already become a good memory.
We will graduate our school soon and take part in the vast, great society. Let's go own way for each other keeping three cautions in our mind. First, never surrender whatever hardship you meet. Second, never lose the light of hope whatever sorrow you have. Third, cheer up the people close to you with your smile and tolerance.
[omit]
There is a proverb in the Bible, "Take therefore no thought for the morrow: for the morrow shall take thought for the things of itself. Sufficient unto the day is the evil thereof."*3 Let's continue to make efforts without being worried about the near term. Coming soon is the rejoiced future world where only those who are right and make efforts steadily will thrive.
Whatever kind of sports you will choose, I pray for your health. Keep your mind refreshed not being bothered by rain nor snow, namely, by any difficulties. Instead, have fun in rain and snow.
I'll never forget the beautiful days that we studied together in high spirits under the bright sun.
Then, it's time about stopping writing. Goodbye, until we meet again.

※リーダビリティ・スコアは74。アプリ曰く12歳くらいから読める英文。


【雑感】
本当に本人が書いた文章であれば、大したものです*4。言葉遣いは十分立派ですし、言いたいことに沿ってきちんと段落を分けています。論旨の繋がりが少し見えにくい箇所はあっても、全体として特に混乱した文章だとは感じません。「歓喜の世界がやがて来ませう」「雨を喜び雪を楽しむ」のくだりなどは、書き手の人柄を伝えるという意味で名文の資格があると思います。
同じ年齢でこんなに書ける人のほうが少ないでしょう。少なくとも、中学卒業時の私よりは上です。私なんてパラグラフという概念を知らず、ただ思い浮かんだ順番に言葉を並べるだけで「俺は長文が書ける」とイキってましたからね。思い出すと恥ずかしい限りです。何とかその反省を残りの人生に活かしたいですね。

*1:すでに(中略)とされた状態で掲載されている。

*2:原文ママ

*3:マタイによる福音書6章34節。英文はキング・ジェームズ版聖書から引用した。

*4:自伝『燃えた、打った、走った!』は新聞記者による聞き書きだとされている。その記者が創作した文章という可能性もなくはない。