Milindaの書斎

母国語と外国語を行ったり来たりしながら、自分なりに「書くこと」を追求したいと思います。

Composition 82 ROOM NO.1301#10

いままでは桑畑綾との会話ばかり取り上げてきましたが、今回の相手は窪塚日奈です。

新井輝ROOM NO.1301#10』p48-49

「嘘なのは日奈の方だったんだよ」
 健一は溢れる感情の中で、その言葉を捕まえた。
「そんなことない!」
 でも日奈は反射的にそれを否定する。その言葉の意味などわかったはずもないのに。
「俺、学校での日奈のことずっとわからなかった。ちっともリアリティを感じなかった。なのにシーナのことは理解できた。本当にいるんだって思えた」
 それは最初にシーナの方を意識したせいじゃなかった。シーナの方がずっと本心で生きていたからだ。
「シーナなんて……私が演じてただけのキャラだよ」
「違う! シーナが本当だったんだ。演じていたのは窪塚日奈の方だったんだよ。日奈は佳奈さんに好かれたくて、佳奈さんが望みそうな窪塚日奈ってキャラクターを演じていたんだ」
 健一はやっとそれでわかった気がした。
「だから佳奈さんはわからなかったんだ。日奈はずっと佳奈さんの前で嘘をつき続けてきたから。だから今更、本当のことを言われても何を言ってるのと思うしかなかったんだ」
 それは今までの言葉で一番残酷なものだったかもしれない。
「そんなこと今更わかったってどうにもならないよっ」
 日奈は悲鳴にも似た声をあげる。
 その気持ちはわかった。痛いほどわかった。もうこれ以上、日奈を傷つけたくないとも思った。でも言葉は止まらなかった。
「シーナが本当だったんだ。佳奈さんのことを好きな日奈が本当なんだ。日奈は俺のことを好きじゃない。そう思って、佳奈さんに否定されたことから逃げようとしてるんだ」
 言わなければいけないと思った。だから言った。

"It is Hina that is just a phantasm."
Being flowed his emotion, Kenichi managed to seize what to say.
"It never is!"
Hina denied Kenichi's words by reflex though she must not have understood what he meant.
"I had not been familiar with you at school because the persona of Hina didn't make me feel any reality. However, I could get to know Sheena better. I could believe Sheena really existed."
It is not because Kenichi recognized Sheena earlier than Hina, but Sheena lives based on the actual intention.
"No...Sheena is only a fictional character played by me."
"Yes! Sheena is you of true. It is Hina that you have played. Wishing to be loved by Kana, you have pretended Kubozuka Hina, Kana's ideal sister."
At last, Kenichi realized why Kana could not have understood Hina's heart.
"You have deceived Kana for a long time. Kana believes the persona you played as Hina is true. So, when you confessed how you love her, she only interpreted you became crazy."
It might be the cruelest phrase so far.
"It's too late. Being told such a thing, what can I do from now on?"
Kana's reply was nearly a scream.
Kenichi could sense how Kana felt as if it were his own affair. Although he didn't want to hurt her anymore, he couldn't stop talking.
"It is Sheena that exists really. It is Kana that you love. You don't wanna be my lover profoundly. You just wanna run away from the fact Kana couldn't comprehend your thought. So you are trying to make up the fake belief that you have loved me at first."
Kenichi dared to inform Kana because he confirmed he had to do so.

※リーダビリティ・スコアは77。アプリ曰く12歳くらいから読める英文。


【雑感】
日奈の好きな相手は、双子の姉である窪塚佳奈です。日奈は佳奈に好かれるために「可愛い妹」を演じ、一方では「シーナ」という少年のふりをして佳奈に近づきます。もちろん、それは世間一般の価値観に照らせば「変」です。
しかし、そうしたあまりにも特殊な条件がある場合には、男女の友情が最後まで壊れないのかもしれません。

おそらく、初期の健一なら性欲に負けてここで日奈に転んでいたと思いますが……(笑) 物語の終盤に来て、健一も成長しているということでしょう。