Milindaの書斎

読んだこと、考えたことなどを書き留めます。外国語はたまに。

Composition 78 自己を処分する

精神分析が面白いほどわかる本』p54-55

アイデンティティ」という概念は、心理学者のE・エリクソンによってつくられた。人間は、早くも幼児前期(二~三歳)の段階で、アイデンティティの基礎を築き上げる。鏡に映った顔を自分の顔であると認識することができ、自分が他人とは別個の人間であるという感覚を持つようになる。
 しかし、それだけでは「自分が誰であるか」がわかっただけである。アイデンティティは「自分がどのような者であるか」を定義しえたときに、はじめて確立するのである。
 その困難な作業は、青年期に課せられる。なぜ青年期なのかは、社会のしくみとも密接に関係してくる。青年は、自分自身で生活の糧を得ていくための準備をしなければならない。つまり、「どのような者であるか」ということは、即、「どのように生き延びていくか」を意味しているわけだ。
 大人でさえ苦しむそのテーマの追求は、青年には重荷である。クラブ活動や文化祭で自己を見出していたとばかり思っていた青年たちが、いきなり「生き延びていく」という問題を突きつけられるのだから。これまで好きだったバンドでは食えない、サッカーでは食えない、バイクでは食えない……。青年たちは、つくりあげたと思いこんでいた「自己」を処分することを強いられる。そこに、「アイデンティティ」の確立に失敗する「同一性の危機」が起こる、とエリクソンは説明する。

Identity is a psychological concept advocated by Erik Homburger Erikson, an American psychologist. According to him, human beings already start establishing the base of one's identity in early childhood, namely, age two to three. At this period, we understand that mirror images are reflections of ourselves. Besides, we become to feel that oneself is distinct from any others.
However, that is just the recognition of who we are. We can finish our identities only after we define what kind of person each of us is.
That knotty assignment confronts us in our youth. It is related to the social scheme that when we are forced to make our self-definition clear. All young people have to prepare for earning by themselves in society. What kind of person you are is directly linked to how you get your daily bread.
Even adults are in distress of self-definition. It is much harder for the youth. The answerless question suddenly thrust into them; How do you become independent and survive in this society? The juveniles have established their identities through their hobbies or school activities, such as club activities or school festivals. However, it doesn't ensure income. Even if a boy is devoted to music, he might not succeed as a bandsman. If a boy practices football very hard, or motorbike racing, he is in the same case. Young people have to scrap their self-image and rebuild a new, more 'rational' one. Some boys and girls fail this operation. Erikson explained that the so-called identity crisis occurs on occasions like those.

※リーダビリティ・スコアは58。アプリ曰く15歳くらいから読める英文とのこと。日本語原文は読みやすいはずだけど、高い数字を出せませんでしたね。


【雑感】
「自己の処分」とはなかなかショッキングな字面ですが、本当はとても大事なことだと思います。私たちは、自己を「つくる」ばかりでは生きていけません。場合によっては、せっかく築き上げた自己を「捨てる」べき時が来ます。
自己とは環境との相互作用で出来上がるものですから、環境に合わない自己は処分対象となるのが自然の理なのだと思います(ただし、場合によっては環境のほうを作り変えてしまうこともできるでしょう。相互作用とはそういうことです)。

振り返ってみると、私が十代のころは自分を「つくる」ばかりで「捨てる」ことに目が向いていませんでした。周りにいたのも「つくれ」と言う大人ばかりで、「捨てろ」と言う人はあまりいませんでした(私のほうでも「つくれ」というアドバイスばかり選別して聞いていたのでしょう。そのほうが自分にとって心地いいから)。

その結果、色々とこじらせてしまいました。いまだに根深い影響が残っています。
もし現在の私が当時の自分にアドバイスするとしたら、以下のような感じになるでしょうか。

  • 自己を「捨てる」ことを大げさに捉える必要はない。「これは大失敗なのだ」「自分が無能だから自己を捨てなければいけなくなったのだ」などと考えないように。
  • 捨てて終わりではない。環境に合った自己をまた作ればよい。どうしても環境が合わないと思ったら、別の環境を探せばよい。「環境を変えるのは逃げだ」「ここで我慢できないやつはどこに行ってもダメだ」などと言ってくる人たちは放っておけばよい。
  • 引用文でも言われているが、自己の確立と処分は大人にとってすら困難な作業である。きっと一生涯にわたって続けなければいけないのだろう。「最終解答」をいま出そうとする必要はない。

じゃあ私が教え子にこれを上手く伝えられるかというと、また難しいわけですけど…(笑)