Milindaの書斎

読んだこと、考えたことなどを書き留めます。外国語はたまに。

Composition 62 ROOM.NO.1301 #3

翻訳は1日やらないだけで下手になります。精神論ではなく、現在の偽らざる実感です。本当は毎日するべきなのでしょうが、なかなか時間管理が難しいですね。
私にオリジナル小説はまだ早くて、基礎練習を1日も欠かさず続けるべき段階なのでしょうか、はてさて……


新井輝『ROOM.NO.1301#3』p137-138

「そんなことが……あったんですか」
「だからここに来てからはずっと作品を作ってた。その間は他のことを忘れられたから。そうしてないと気が狂ってしまいそうだったから。そのせいで飢え死にしそうになることも何度かあったけど……それでもいいのかなって思ってた。そうすれば、もうお母さんのこと悲しませずに済むんだろうなって……そう感じてた。そんな時なんだ、健ちゃんに会ったのは。健ちゃんが私に生きる希望をくれたんだよ。あの時、健ちゃんが助けてくれて、水を買ってきてくれて……チョココロネも買ってきてくれて*1。それで私、もう少し生きてみようかなって思ったの」
「そんなに深刻な話には見えませんでしたけど……」
「健ちゃんが見た私は希望を得た後の私だったんだよ」
「……そうだったんですか」
「健ちゃんがさ、ここの住人だってわかった時は嬉しかったな。健ちゃんとなら、作品を作ってない時間も楽しく過ごせそうだなって感じた。だから健ちゃんもここに住んでくれるなら、私、生きていけそうだなって。ご飯を作ってくれるとかそういうことじゃなくてね。まだ死ぬのは嫌だなって……本当に思えたんだよ」
綾はそれで顔を上げると、健一の前でボロボロの情けない笑顔を見せる。

"I little know it..."
"After moving here, I have put my whole heart and soul into making my artworks. While I'm working the metal, I can forget everything else. Unless I'm doing so, I should lose my sanity. Being too absorbed, sometimes I've been about to starve...but I felt like it would be a kind of good results...If I die, mom doesn't be troubled anymore. I met you in such a condition. You gave me the hope of living. At the time, you helped me up and bought me water...besides, a horn-shaped pastry. So I got the will to live a little more."
"However, you didn't look so heavy at that time..."
"You saw me after I got hope again."
"...I see."
"When I knew you also live in this apartment, I was delighted. I felt I would have a good time with you even when I wasn't doing metalworking. I realized I could live from then on if you were here. I don't mean I wanted you to cook instead of me nor to do any other household cares. I mean that I wanted to live with you rather than to die alone...I thought so with all my heart."
Aya raised her face and then showed a worn-out pitiable smile to Kenichi.

(Readability score: 87)


【雑感】
私が綾と健一の会話ばっかり抜き出しているから彼女が物語の中心にいるみたいに見えるかもしれませんが、必ずしもそうではありません。健一の気持ちが向いているという意味では蛍子がメインヒロインだし、同棲してセックスしまくってるのは冴子だし……(笑)

まあしかし、ここは(ここも)綾の名場面ですね。過去の記事でも触れたように、蛍子から見た綾は生まれついての天才です。創作意欲の塊であるかのように描かれています。しかし、実は常にポジティブな動機で創作していたわけではないのです。

*1:まったく知らなかったが、「コロネ」って日本で開発されたパンらしい。とりあえず辞書に従って horn-shaped pastry としておく。