Milindaの書斎

母国語と外国語を行ったり来たりしながら、自分なりに「書くこと」を追求したいと思います。

Composition 34 ボヴァリー夫人

 私たちは自習室にいた。すると、校長が制服でない普通服を着た『新入生』と大きな教室机をかついだ小使いをしたがえてはいってきた。いねむりしていた連中は目をさました。みんな、勉強中のところを不意打ちくらったように立ち上がった。
 校長はすわれと合図し、それから自習教師のほうをむき、小声で、
「ロジェ君、この生徒をたのむ。二年級へ入れる。勉強と品行がいいようだったら、年相応の上級(原文では傍点)へ変えることにするから」
 扉のうしろの隅っこにひっこんでいるのでよく見えないが、『新入生』は十五歳くらいの田舎の子で、私たちみんなより丈[せ]が高かった。村の聖歌手よろしく前髪をおかっぱにそろえ、分別くさげに、大そう気まりわるそうだ。肩幅はひろくないが、黒ボタンのついた緑色のラシャ上着は袖つけのところできゅうくつそうで、ふだんむき出しにしつけた赤い手首が袖の折りかえしの隙間からのぞいていた。青靴下をはいた足がズボンつりでぎゅっとつり上げた黄色っぽいズボンからのぞいていた*1。みがいてない、鋲をうったがっしりした靴をはいている。
 学課の暗唱がはじまった。彼は説教でも聞くように、足を組むこともせず、肱もつかず、謹聴というかっこうで聞いた。二時に鐘が鳴ったとき、自習教師がみんなといっしょに列にはいるんだと注意してやらねばならなかった。

生島遼一訳、フローベールボヴァリー夫人』p7-8

We were in the anteroom. Our principal came in, trailed with 'Newcomer' and a servant. The Newcomer wore not our school uniform but plain cloth. The servant was holding a large classroom desk. Some guys were dozing, but they became awake. We were surprised by the sudden comers and interrupted our self-study. All of us stood up like a reflex.
The principal gestured for us to sit down. He turned his head to our proctor and whispered, "Roger, take care of this student. He joins the second grade. If both his result and conduct are sufficient, I will shift him to the upper grade according to his age."
The Newcomer was staying behind the door, so we could not see him well. He seemed to be rural. He was around fifteen years old and taller than all of us. His hairstyle was bowl cut like a member of a choir in a pastoral. He looked sensible and very embarrassed. Though he didn't have broad shoulders, the cloth was small for him. His jacket looked tight, and the red wrist of his shirt peeped from the cuff. His legs in the blue sox stuck out from the yellowish trouser braced by the suspender. His feet were in the sturdy shoes with rivets, but those shoes were not polished well.
We start reciting our textbook, which is our daily work. The Newcomer was sitting motionlessly. He didn't cross his legs nor rest his elbows on the desk. He looked too attentive as if he had been listening to a sermon in a church. At two o'clock, the bell rang to notify us of the end of one period. He was in the stillness yet. Our proctor needed to order him to stand up and take part in our line.

【雑感】
生島先生がフランス語原文から日本語に訳したものを、私が英語にしています。小説の筋を理解することだけが目的なら、まったく意味のない行為です。でもまあ、いい練習になるんですよ。
『新入生』のようすを描写した段落では「He」「His」ばっかり文頭に続けてしまって、ちょっと単調になったかなと思います*2*3。表現の幅を広げたいところです。ただ、校正アプリに「同じ形の文を繰り返している」と注意されることはなかったので、英語では文頭の表現が被ってもあまり気にされないのかもしれません。
そう注意されたのはむしろ最後の段落ですね。引用文の「学課の暗唱がはじまった。彼は説教でも聞くように、足を組むこともせず、肱もつかず」というくだりを訳したら、なぜか monotonous とか repetitive とか they all follow the same pattern と警告されました。正直、私の感覚では何が悪かったのか分かりません。繰り返しが多いというなら、1つ前の段落のほうがよっぽど多かったはずなのですが。日本語と英語では「何を繰り返しと感じるか」がまったく違う、ということなのでしょうか? なお、which is で文を繋いでみたら警告は消えました。

*1:「のぞいていた」という文末表現が被っている。原文ではどうなっているのだろう。

*2:服装についての情報は、自分が理解できていないせいもあって一部カットした。

*3:1段落の中で looked を2回使ってしまったことも気になる。ネットの類語辞典で調べてもいい言葉が見つからなかった。